■チームメイトが悔しがる光景
そういうものをJリーグのピッチで表現するのは簡単ではないが、スペインで感じた野心やエゴを出すことはできるだろう。バルサBには高みを目指す若手がゴロゴロいたはず。そこで切磋琢磨しながら這い上がっていく逞しさや図太さがなければ、サッカー選手として成功できないと安部は痛感したはずだ。
「いろんな選手が行っていると思いますけど、Jリーグのチームってすごい一体感がありますけど、海外のチームはそこまではない。11人がそれぞれ違う方向を見ていることなんか全然ありますし、その中で誰かが活躍して点を取る傍らで、チームメートが悔しがるというのが当たり前の環境だと思います。
日本はユース年代から人間教育を受けるので国民性が違いますけど、それが日本のよさであり悪さでもある。直すべきかは分からないですけど、僕はそういう現実を目の当たりにしましたね」と安部は神妙な面持ちで話していた。浦和でそういうバチバチした空気を彼や中島が作ってくれれば、攻撃陣の個の力もグッと上がるかもしれない。
いずれにしても、バルサという誰もが辿り着くことができない場所に身を投じた男には、小さくまとまってほしくない。浦和でマチェイ・スコルジャ監督の守備戦術を叩き込み、求める戦術を実践するなど、越えなければいけないハードルは少なくないが、安部には安部らしいよさがある。空白の時間は確かにあったが、鹿島時代以上の輝きを放つことが彼ならばできるはずだ。
24歳になった安部裕葵の新たなサッカーキャリアがどのようなものになるのか。本当の闘いがスタートするのはここからだ。