■畠中槙之輔が感じた違い
2016年に山梨学院大学付属高校から当時J2の松本山雅入りした頃は「スピードは凄まじいが、ボールを止める蹴るの技術が足りないし、点も取れない」と当時の指揮官である反町康治監督(現日本サッカー協会技術委員長)も苦言を呈していた前田。その彼が劇的な飛躍を遂げたのが、2020年夏~2021年末まで1年半過ごした横浜だった。
「(松本山雅や水戸ホーリーホックで過ごした)自分がずっとJ1上位のマリノスに入れるなんて思っていなかったし、そこで試合に出れたのが信じられない。点を取ってる時も『あれ、俺、なんかマリノスで点取れてる』みたいな夢の中の感覚みたいだった。フワフワして現実味がないと言うか。
それまでの自分はそういうことに縁がなかったから、2021年に23ゴール取って得点王になったことも信じられない気持ちでした」と今年2月、グラスゴーで取材に応じた彼は横浜時代をしみじみと振り返っていた。
親善試合とはいえ、それだけ恩のあるクラブとの古巣対決でハットトリックを達成したのだから、本人も大いに自信を深めたはず。対峙したDF陣も前田大然の変貌ぶりに驚きを隠せない様子だった。
「マリノスの頃よりシュートもスペースの入り方もうまくなってるなと思いました。当時はチャンス3つで1本取れればいいという感じだったけど、今は確実に仕留めてくる。(2022年カタール)ワールドカップ(W杯)も行ってるし、成長してるんだなと痛感しましたね」と畠中槙之輔も素直に認めていたほど。
古巣にゴールという形で恩返しした今の前田大然は、「鬼プレス」と「猛烈スプリント」だけではない。「決められる男」になりつつあるのだ。