サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「どこにも規定がないって本当?」なアレについて。
■規則が定める「部外者」
カタール大会では、1チームの登録選手数がそれまでより3人増え、26人となった。すなわち交代要員は15人もいた。カタールのピッチレベルは、ご自慢の「スタジアム冷房」で20度前後まで気温が下げられていた。冷えを感じて、ウォームアップの頻度も高くなったに違いない。その選手たちが動き回るのである。第1副審を務めた人はさぞ背後が気になっただろう。
それだけではない。大会が進むと、このウォームアップエリアにいる選手たちがその場でピッチ内の選手たちを応援し、声をかけ、指示を出す姿がどんどん目立ってきたのである。そして大会終盤には、重要な得点がはいるとウォームアップ中の選手がピッチ内になだれ込み、歓喜の輪に加わるようになったのである。
この光景は、「ショー」としては最高に素晴らしかった。得点の感動が十倍にも二十倍にもなったし、選手たちの大会にかけるパッション、何よりも「チーム一丸」で戦っている姿を、ストレートに、そしてこれ以上ない形で見ている者に伝えたからだ。
だが、サッカーのルールはピッチ内に出場選手以外の者(チーム役員や交代要員)がはいることを禁じている。「サッカー競技規則」では、11人対11人の両チーム選手以外を「部外者(Extra persons)」とまで呼んでいる。「部外者」がピッチに立ち入ったら、主審はその者を退出させ、必要なら適切な懲戒処分(イエローカードやレッドカード)をとらなければならない。