■IFABのご都合主義
2022年ワールドカップで適用されていたのは、当然、2022/23年版の競技規則である。その第3条第9項によると、「得点があったときに競技のフィールドに部外者がいた場合」とし、その部外者が「得点したチームの競技者、交代要員、交代して退いた競技者、退場となった競技者またはチーム役員であった場合、得点は認めてはならず、部外者がいた位置から直接フリーキックで再開される」と、はっきりと書かれている。
メッシがシュートした瞬間にはすでにアルゼンチンの交代要員がピッチにはいっていたのだから、当然、得点は取り消しにされるべきだった。たとえアルゼンチン交代要員のピッチ侵入のタイミングを主審や副審、第4審判が正確には認識できなかったとしても、得点かどうかに関することであれば当然VARが介入できる事項であるため、簡単に決めることができたはずだ。ところが、ポーランドのトマス・クビアトコフスキーをリーダーとするVARチームからは何のアピールもなく、同じポーランドのシモン・マルチニアク主審も得点を認めてしまったのである。
その判定を「後追い」するように、国際サッカー評議会(IFAB)がことしのルール改正で、「得点があったときに競技のフィールドに部外者がいて」も、「その部外者がプレーを妨害していたことが分かった場合」にのみ、「得点を認めてはならない」とした。何というご都合主義だろうか!