欧州での放映権料合意の裏にあるFIFA会長の言い訳【女子ワールドカップ放映権問題の「根幹」】(1)の画像
なでしこジャパンのW杯での戦いは放映されるのか 撮影:中地拓也

 2023年7月に開幕する女子ワールドカップの放映権問題が、まだ解決していない。現状では、日本での放映が決まっていないのだ。これは単なる一過性の問題ではない。サッカージャーナリスト・後藤健生が、その根幹に切り込む。

FIFAの大義名分

 7月20日にオーストラリアとニュージーランドで開幕するFIFA女子ワールドカップ。その日本におけるテレビ放映がまだ決まっていない。

 6月13日に掲載したコラム「女子ワールドカップの放映権料が示すサッカー界の問題」で僕がこの問題を取り上げた時点では、日本だけではなくイングランドやフランス、ドイツ、スペイン、イタリアといったヨーロッパの主要サッカー国での放映も決まっていなかった。

 だが、ヨーロッパではFIFAとEBU(ヨーロッパ放送連合)の間で合意が成立。「主要国で放映が決まっていないのは日本だけ」という状況となった。

 これまで交渉が暗礁に乗り上げていたのは、FIFAが設定した放映権料と各国のテレビ局側が提示したそれとの間に大きな乖離があったからだ。

「男子ワールドカップでは放送局が1億~2億ドル(140億~280億円)を支払うのに、女子では100万~1000万ドルしか提示してこない」

「女子ワールドカップの視聴率は男子の5、6割に達するにもかかわらず、ヨーロッパの国からの提示額は男子の20分の1から100分の1くらいしかない」

 FIFAのジャンニ・インファンテーノ会長のこうした言葉がすべてを語っている。

 つまり、FIFAはまさか男子ワールドカップに「近い額」とは言わないだろうが、その10パーセント程度の放映権料を期待していたのだろう。

「それが、女子サッカーの地位向上につながる」というのがFIFAの大義名分だ。

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