大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第114回「1ゴール8億5000万円は高いか安いか」(2)1世紀以上選手を縛り付けてきた「慣習」の画像
選手の移籍に自由がもたらされた(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは夏がくれば盛んになる「あれ」。

■サッカー選手の契約

 さて、「サッカーの移籍金」は、今世紀に入って、正確にいえば1996年から革命的に変わった。クラブと選手は「契約」によって結ばれているのだが、1995年までのサッカーでは、その契約期間が満了しても「フリー」にはなれるわけではなかった。クラブに「保有権」というものが認められていたからだ。

 たとえばAという選手が6月で契約期間が終わり、そのシーズンはあまり活躍の場を与えてもらえなかったA選手が移籍を希望したとする。しかし当時の「慣習」では、所属クラブには契約期間が終了しても選手を縛る権利が保証されており、移籍先のクラブに「移籍金」を要求することができたし、交渉がまとまらない場合には「飼い殺し」にすることさえできた。

 非常に非近代的で、まるで「奴隷制度」のようなシステムだったが、その慣習は1世紀以上続けられ、広く世界で同じシステムが使われていたのである。

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