■日本サッカー界の課題

 もしかしたら、遠藤や川崎の守備技術は、ひとつのもって生まれた才能かもしれない。しかしそうした才能の多寡にかかわらず、すべての選手に「守備の基本」を身につけさせることは大きな意味がある。

 無考えにボールを奪いにいってあっさりとかわされてしまう選手、ただ「ハード」にプレーすることが守備だと勘違いしている選手ばかりの試合では、攻撃側も進歩しない。サッカーでは守備と攻撃は「共進化」する。守備が良くなれば、それを乗り越えようと攻撃が進化する。そして攻撃が良くなれば、それを抑えるための守備が進化する―。

 何よりも、守備技術の向上は、サッカーを「より安全」な競技にするはずだ。「ケガをするのではないか」という恐怖を相手に与えるような「著しく不正なプレー」も、大きく減るだろう。

 「インテンシティー(強度)」は今日のサッカーの不可欠な要素で、育成レベルのサッカーでも強調されている。しかしそれが無謀なタックルやただ「ハードさ」を求める守備になってしまったら、技術面でも、メンタル面でも選手たちの成長は止まってしまう。粘り強い守備技術とメンタリティーを育てるのは、いまの日本サッカーにとって非常に重要な課題だ。

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