後藤健生の「蹴球放浪記」第163回「日本代表の遠征取材で学んだ多様性」の巻(1)2007年、アジアカップでタイへ赴くの画像
アジアカップの入場券。国ごとにチケットの色が違う。タイはブルー 提供/後藤健生

 世界に出れば、さまざまなサッカーがある。多様性が広がるのは、個々の人間についても同様だ。蹴球放浪家・後藤健生は、東南アジアへの遠征でも多様性を学んだ。

■一過性で終わるのか

 国会では「LGBT理解増進法」(正式には「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」)が問題になっています。性的マイノリティーに対する理解の増進や差別の禁止などを定める法律のことですが、自民党が2年前に与野党間で合意した法案を大きく修正して「差別の禁止」を排除した自民党案を国会に提出しました。欧米からの批判を避けるために広島サミット前までに国会に提出する必要があり、伝統的な家族観を重視する党内保守派の同意を得るために修正したのです。

 しかし、「差別禁止」を盛り込むべきだという立憲民主党などリベラル派からの批判がありますし、逆に国民民主党や日本維新の会など保守系の野党はまた別のうごきを見せており、広島サミットも終わってしまったので、このままでは保守派の思惑通り、法案は廃案となってしまうでしょう。

 欧米では性的少数派の権利が認められるようになっており、ヨーロッパの多くの国ではいわゆる同性婚が認められていますし、アジア随一の民主“国家”台湾でも同性婚を認める方向で動いているようですが、日本は保守派の力が強く、こうした社会的なイシューの進展は難しいようです。

 保守派は家を中心とした伝統的な社会の維持を主張しています。

 しかし、歴史的には日本は欧米のキリスト教国に比べて性的な問題ではずっと自由だったはずです。

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