■日本やアジアの伝統

 キリスト教では結婚は神の導きによるものであり、たとえばカトリック国ではつい最近まで離婚が認められていませんでしたし、もちろん同性愛はタブーでした。さらに、性行為の内容にまで宗教的あるいは法的な規制があったのです。

 それに対して、江戸時代までの日本は性的に自由な社会でした。少なくとも庶民レベルでは結婚も離婚もかなり自由で、離婚経験のある男女も次の相手を見つけてすぐに再婚が可能な状態でした。武士たちの間でも、昔の言葉でいう「男色」は珍しいことではなかったはずです。

「一夫一婦制」が厳密に適用されて、離婚が「後ろめたいもの」と見なされるようになったのも、同性愛が悪と考えられるようになったのも、明治時代になってから近代化を進める当時の政府が欧米の道徳観を日本に持ち込んでからのことでした。

 そのあたりの歴史的な経緯を、いわゆる「保守派」の人たちはどのように考えているのでしょうかねぇ?

 西アジアのイスラム圏では同性愛は悪と見なされていましたが、東アジアの仏教国は日本と同じように一般的に性的には緩い社会でした。そして、東南アジアでは今でもその伝統が続いているようです。

 東南アジアに行くと、性的少数派の人たちをよく見かけます。LGBTQの人たちが多いというより、彼らが社会的に隠れて暮らす必要がないのでしょう。

 タイのバンコクでそんなことを痛感したのは2007年のアジアカップの時でした。

(2)へ続く
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