後藤健生の「蹴球放浪記」第162回「ジュゼッペ・メアッツァで『にらみ返し』」の巻(1)チャンピオンズリーグ準々決勝を「誰かの指定席」で観戦する方法の画像
ミラン対アヤックス戦、ゴール裏の入場券(印字は薄くなってしまった) 提供/後藤健生

 サッカーの世界では、日本人が持つ真面目さを「狡猾さ」が上回ることがある。サッカージャーナリストにとっても、これは重要な要素だ。蹴球放浪家・後藤健生は日本の伝統文化を活かしつつ、マリーシアを発揮して世界を渡り歩いてきた。

■「にらみ返し」とは

「にらみ返し」という古典落語をご存じでしょうか?

 江戸時代の商売というのはまことにのんびりしたもので、米屋でも酒屋でも日常の売り買いは掛け売り、つまりツケで行われておりまして、代金はまとめて大晦日(当時の太陰太陽暦には「31日」はなかったので12月30日)に支払えばよいことになっていたのです。

 しかし、大晦日は大変でした。「銭が足りない」となると次から次にやって来る「掛け取り」に言い訳をしなければなりません。そこに現われたのが「言い訳屋」。その家の主人に代わって言い訳をしてくれるというのです。で、言い訳屋は次々とやって来る「掛け取り」を怖い顔をして無言でにらんで追い返してしまうという話です。

「言い訳屋」の表情で笑わせる滑稽話で、五代目柳屋小さん師匠の得意演目でした。

「蹴球放浪記」にどうして「にらみ返し」が出てくるかというと、インテルとミランのチャンピオンズリーグ準決勝を見ていてスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァで「にらみ返し」をした経験を思い出したからです。

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