「日本には守備の文化がない」との指摘を過去のものとした緻密な戦術的サッカーの発展【Jリーグ誕生から30年の進化の証】(3)の画像
浦和のACL制覇も、日本サッカーの成長を証明した 撮影:中地拓也

 Jリーグは今年、誕生から30周年を迎える。初めて誕生したサッカーのプロリーグは、さまざまな影響を日本とサッカー界に与えてきた。Jリーグの進化の証を、サッカージャーナリスト・後藤健生がつづる。

■緻密な戦術的攻防

 5月14日の記念スペシャルマッチ、鹿島アントラーズ名古屋グランパス戦は必ずしもスペクタキュラーなサッカーではなかったが、両チームの激しいプレーがグラウンド全面で繰り広げられる非常にプレー強度の高い試合。つまり、Jリーグのサッカーの進化(変化)を印象付けるような試合だった。

 前半のうちに鹿島がセットプレー(CK)から先制した。12分に鈴木優磨がヘディングを決めたのだが、VARの介入によって取り消された。だが、29分にも再び同じように右CKからのボールを鈴木が再び頭で決めたのだ。

 周囲の選手が動いて鈴木をフリーにし、鈴木自身も後方にステップを踏んで相手のマークから逃げる見事なセットプレーだったが、同じ形を許して失点してしまったあたりは名古屋のミスと言うべきだろう。

 前線のマテウス・カストロや永井謙佑キャスパー・ユンカーといった選手のスピードを生かしたカウンターが強力な名古屋だが、鹿島に先制されたことで試合運びを難しくしてしまった。相手にしっかり構えて守られてしまったので、カウンターを発動できなくなってしまったからだ。パスをつないでビルドアップする必要が生じたのだ。

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