■アディショナルタイムに猛攻を仕掛け…

 ここ2試合勝利のない仙台は、後半も強度の高い守備を続けていく。早めの選手交代で反撃を試みる山形に、試合の主導権を渡さない。

 ウノゼロの勝利が見えてきた85分、ユアテックスタジアム仙台に悲鳴と歓声が交錯する。山形のFW藤本佳希にオーバーヘッドを決められ、仙台は1対1に追いつかれてしまう。

 このまま1対1の引分けに終わったら、仙台にとっては勝点1を取った試合ではなく、勝点2を失った試合である。同点では終われない。何としても、勝ち切らなければならない。

 7分のアディショナルタイムに突入すると、仙台はアクセルをもう一度踏み込んだ。90+1分、途中出場のFW中島元彦の右足シュートがバーを叩く。中島はその直後にも左足で狙うが、これはゴールマウスを逸れていく。

 90+2分、右SB真瀬拓海がペナルティエリア内右から左足で狙うが、相手GKに弾かれる。

 90+3分、途中出場のMFフォギーニョがペナルティエリア内右でフリーになり、右足を振り抜く。枠を捕らるべき一撃が、大きく逸れてしまう。

 際どいシーンが訪れるたびに、仙台サポーターの声援が大きくなる。残り時間は少なくなっていくが、勝利を諦める雰囲気は、ピッチにも、スタンドにもない。

 そして、ドラマが生まれる。

 90+6分だった。ペナルティエリア内右へ侵入した真瀬が、ゴール正面の中島へパスを通す。ファーストタッチをピタリと決めた背番号7は、正面から2人、左右からも2人がシュートコースを消そうとした直前に、左足を柔らかく振り抜く。コントロールされた一撃が、ゴール左上へ突き刺さった。

 試合後のフラッシュインタビューに応じた中島は、「その前に2本外して、これはあかんなと。真瀬がいいとこに(パスを)くれたんで、絶対決めなあかんと思って。決められて良かったです」と、言葉を弾ませた。

 ホームのユアスタで、みちのくダービーで、アディショナルタイム弾で、仙台は勝利をもぎ取った。浮上のきっかけとなる材料は、これ以上ないぐらいに揃っている。

 それだけに、次の試合が大切だ。今シーズンまだ一度もない連勝を飾ることができれば、この勝利の意味はさらに大きくなる。

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