■「雨でおいしかったですね」
この試合で、早坂はけっして長い出場時間ではなかったが、好プレーを披露した。後半25分にCKから合わせられた相手のヘディングシュートをキャッチすると、その3分後には相手が遠目から狙ってきたシュートをジャンプしてかき出した。判断や動作のタイミングが少しでも遅れれば、ゴールネットを揺らされている場面だった。
そのプレーについての手応えを聞いてみると、「けど」と切り出したうえで、「弱点としては、前に出てる分、後ろのところはリスクがあるので、そこは難しいところでした」と、あえて課題を口にしたのだった。
早坂が自分に厳しいハードルを課すのは、公式戦での試合出場を見据えているから。先述したように、強い雨が降る中でのプレーとなっただけに、「めちゃめちゃ難しかった」と素直に話すが、「でも、サブで入った時というのはどんな時でもスクランブルで試合に出るのが多いと思う」だけに、「そういった意味では雨でおいしかったですね」と笑顔を見せた。
「ああやって実戦をやることによって、意識や準備の仕方は全然変わる。紅白戦とも違いますし、お客さんが入ってやるっていうのは、ましてやアウェイでっていうのは、すごく試合を想定しやすい環境だったので、良かったです」
現在、リーグ戦とルヴァンカップを並行して戦い、さらに今後は、天皇杯とACLを加えて戦うこととなる。「カミ君が出てるからには、全員でサポートしたい」と話しながらも、「どんなスクランブルがあるか分からない。常にいい準備して待ってます」と力強く話す23歳がいることは、チームにとって大きな武器である。
(取材・文/中地拓也)