大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第103回「おお、芝生!」(2)実はルールに記載されていない「芝生」という言葉の画像
マンチェスターのオールド・トラフォードスタジアム、2012年。本来なら、レンガと同じ高さにピッチがあるのだが、異様に高くなっている (c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは「ミスター・ピッチ」。

■「フィールドの表面」とは何か

 では、そもそもなぜサッカーは芝生の上で行われるのだろうか。サッカーのルール(競技規則)には、「芝生」という言葉などまったく出てこない。ルール第1条の第1項には、「フィールドの表面」として、以下のような記述がある。

 「競技のフィールドは、全体が天然、または競技会規定で認められる場合は全体が人工の表面でなければならない。ただし、競技会規定で認められる場合、人工と天然素材を組み合わせたもの(ハイブリッドシステム)を用いることができる」

 人工芝でなければ、「天然=natural」である。芝生でなくても、土でも、石ころだらけでもいいことになる。しかしサッカーは何と言っても天然芝なのである。

 「ハイブリッド」とは、天然芝のなかに人工芝を10%ほどまで混ぜることによって強度を高めようというもので、感触としては完全に天然芝である。ただ世界では多くのスタジアムで使われているものの、日本国内ではあまり成功例はない。

 そしてもちろん、近年非常に質が良くなってきたとはいえ、人工芝は練習場や使用頻度の高いグラスルーツの競技場ではいいが、トップクラスの試合では敬遠される。Jリーグでは「天然芝あるいはJリーグが認めたハイブリッド芝」と規定されており、人工芝のスタジアムは認められていない。

 「天然の表面」であれば、ルール上は土でもいい。実際、かつての日本には芝生のグラウンドは数が非常に少なく、あっても季節によっては土同然のものばかりだった。

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