■渡邉新監督に求められる「ロマンからの脱却」
昨シーズンも序盤は苦しんだ。7節終了時点の成績は1勝3分3敗である。勝点だけなら2勝5敗の今シーズンと同じだが、試合内容は違う。自分たちのスタイルは構築されているものの、決定機を生かせないことで試合を難しくしてしまっているのだ。
ボールを支配することはできているのだが、スペースを支配しているとは言えないのが今シーズンここまでの山形のサッカーだった。つまりは、ゲームそのものを支配しているとは言えなかった。攻勢の時間帯で仕留められないために、ゲームを支配しきれないのである。
後任には渡邉晋コーチが昇格する。J1当時のベガルタ仙台とJ2のレノファ山口FCで監督を務め、22年からコーチを務めてきた。経験は申し分なく、チーム状況も把握している。4月8日の8節から同16日の10節まで、中3日で3連戦が組まれていることを考えても、内部昇格はベターな判断だろう。
渡邉新監督に求められるのは、「ロマン」からの脱却だ。
クラモフスキー監督のフットボールは、観衆を魅了する要素を多く含んでいた。しかし、2勝5敗で18位に低迷する現在の山形に必要なのは、内容ではなく結果だ。美しいサッカーで勝利をつかむというロマンではなく、泥臭くても勝点を拾っていくことが求められる。
ここまで6勝1分で首位を走る町田は、リードした終盤にCBを増やして5バックで逃げ切る。山形に求められるのは、そうした割り切りだ。1本のリスタートで先行し、そのまま逃げ切るような試合がほしいのだ。クラモフスキー監督の在任時は決して多くなかった「ウノゼロ」の試合を増やしていくことが、新監督には求められる。