大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第102回「ペナルティーエリア その絶妙な存在」(2)サッカーが持つ「いい加減さ」の象徴の画像
試合前日、精密な機器を使って正確そのもののラインが引かれるが、良い意味での「いい加減さ」がペナルティーエリアにはある (c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回はゴール前の大きな四角。ペナルティーエリアが自らを語る。

■「18ヤード」の誕生

 1891年に大きなルール改正があった。4本のフラッグポストの間をゴールラインとタッチラインで結び、ピッチが明確に区切られることになったのだ。ハーフラインも引かれた。そしてペナルティーキック(PK)の導入もこの年だった。当初のPKは、ゴールラインから12ヤード(11メートル)の距離のどこからけってもよかった。その距離を示すため、ゴールラインと並行に、12ヤード離れたところに両タッチライン間を結ぶラインが引かれた。

 当時は、PKになる反則は12ヤードラインの内側でのものだった。だがやがてそれは「18ヤード」に広げられ、ゴールラインから18ヤード(16.5メートル)の距離にも、破線でラインが引かれた。これが私の「祖先」ということになる。この破線の内側で守備側が反則を犯すと、攻撃側にペナルティーキックが与えられることになったのである。

 ちなみに、1891年のルール改正では、ゴールキックについても「ボールが出たところから近いゴールポストから6ヤード(5.5メートル)以内のところから行われる」と規定され、それに従って半円をずらして2つ重ねた「3」のようなラインがゴール前に引かれた。これが私の小さな弟「ゴールエリア」の「祖先」である。

  1. 1
  2. 2
  3. 3