「70兆円」で欧州とアフリカとの「越境ワールドカップ開催」を狙うサウジアラビア【ピッチ内外で見えたアジアサッカーの「もう一つの横顔」】(2)の画像
W杯でアルゼンチンを破るなど、サウジアラビアはピッチ上でも十分に野心的だ 撮影/渡辺航滋(Sony α1使用)

 世界のサッカーは日々、目まぐるしく変化していく。日本が属するアジアも、例外ではない。ピッチ内外で見え始めたアジアサッカーの「もう一つの横顔」にサッカージャーナリスト・大住良之が迫る。

■70兆円の計画都市

 ロシアとともに世界のサッカー界で大きな動きを見せつつあるのがサウジアラビアである。自他ともに認めるアラブ世界の盟主でありながら、オイルマネーを背景に「孤高」を保ってきたサウジアラビアは、近年、大きく政策を転換し、2019年には「観光ビザ」の発給も行うようになった。ムスリム(イスラム教徒)でなければまだ聖地メッカにははいることはできないが、メッカと並ぶ聖地であるメディナの観光は昨年解禁された。

 そのサウジアラビアが、いま観光の目玉としようとしているのが、5000万ドル(約70兆円)を投じるという、この国の北西部に建設中の計画都市「ネオム」だ。そこには、高さ500メートルもの「壁」で南北をはさむことで快適な人工的気候を確保した、幅200メートル、東西の長さ170キロという超未来型の「線状都市」「ザ・ライン」のほか、標高1500~2600メートルの山地につくられる人工のウインターリゾート「トロジェナ」などの観光施設が計画されている。

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