■取り残された時間における周囲の進歩

 さて、ビデオ判定の導入が他の競技より10年ほど遅れたことは、単に時期が遅くなっただけでなかった。その10年間に、映像テクノロジーが大きく進歩していたからだ。

 大相撲でビデオ判定が導入されたのは1960年代。ようやくビデオテープによるアナログ録画の技術が実用化されたばかりの頃だった(ビデオテープは高価だったので、テレビ局でも上書きして何度も再利用した)。

 当然、使えるのはテレビ放映されている映像だけだった。

 21世紀初頭に相次いでビデオ判定が実用化されたが、テニスで導入された「ホークアイ」を除いて、基本的には使うのはビデオ映像だけだった。

 たとえば、ラグビーでインゴールにボールをグラウンディングしたかどうかを判定する場面(ボールをインゴールに持ち込んでもグラウンディングできていなければ、トライにはならない)。「TMO」で映像をチェックするときに使用されるのは、数台のカメラで撮影したビデオ映像だけで、「ホークアイ」のようなテクノロジーも、3Dラインのようなテクノロジーも使っていない。

 いわば、「肉眼の延長」である。

 レフェリーからとは違った角度から見ること。そして、スローで繰り返して見ることができる点が、「肉眼」との違いということになる。

 サッカーでも、使用する映像はこの程度のものでいいのではないか?

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