後藤健生の「蹴球放浪記」第146回「2つの国の代表のホームとなった世界で唯一のスタジアム」の巻(1)フランス代表を撃破した2012年の日本代表欧州遠征での僥倖の画像
日本対ブラジル戦のADカード 提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生のサイドトリップは、観光の枠に収まらない。時には、サッカー史上の重要ポイントの目撃というミッションに挑む。フランス代表のホームに乗り込み撃破した2012年の日本代表の欧州遠征で、続くポーランドにおけるブラジル戦でも見逃せないポイントがあった。

■サイドトリップの重要なテーマ

 前回は「世界遺産の劇場でオペラを熱唱した」というお話をご紹介しましたが、僕は別にいつも歌を歌うために歩き回っているわけではありません。真面目な(?)「サイドトリップ」もしています。

“サッカー史研究”のために現地の図書館に通うこともありました(ベラルーシの首都ミンスクの図書館での出来事は『蹴球放浪記』第29回「日本代表、60年前の勝利の真相」の巻参照)。

“スタジアム巡り”も「サイドトリップ」の重要なテーマです。

「サッカー取材で旅行しているのだから、スタジアムに行くのは当然だろう」と思われるかもしれませんが、ここで言うのは取材対象の試合が行われるスタジアムではなく、古いスタジアムのお話です。

 1998年に『サッカー批評』第3号の取材でフランスに行ったときにはパリ近郊のコロンブ市にある「スタッド・オランピーク・イヴ・ド・マノワール」を訪問しました。1924年のパリ・オリンピックで使用され、1938年には第3回ワールドカップの決勝戦の舞台となった古いスタジアム。1972年にパルク・デ・プランスが完成するまではサッカーやラグビーの国際試合やカップ戦の決勝などに頻繁に使用されていた重要なスタジアムでした。

 僕が訪れた時には古いメインスタンドしか残っていなかったのですが、その後、破産状態だったラシンが復活。現在はラシンの試合(ナシオナル2=4部リーグ)に使われており、仮設のバックスタンドも造られたようです(第72回「フランス第3回ワールドカップのメイン・スタジアム」の巻を参照)。

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