カタールワールドカップは、決勝までも劇的な展開となった。アルゼンチンの優勝で幕を閉じた大会では、決勝でのアナウンサーの実況も話題になっている。
59歳のアンドレス・カントールさんは、アメリカでアナウンサーとして活動している。アメリカ国籍も持つものの、生まれはアルゼンチン。家族とともに移住したアメリカで、「ネイティブ」のスペイン語も活かしてサッカーの実況などを行ってきた。
今回のワールドカップでも、精力的に取材と実況を行ってきた。得意の「ゴーーーール!」の絶叫で、ワールドカップの熱をファンに届けていた。
その熱があふれ出た。決勝でも実況を担当したカントールさんだが、どうしても母国アルゼンチンへと気持ちが傾く。しかも、世界一を決定する戦いは、あまりにも劇的な展開だった。アルゼンチンが前半36分までに2点をリードしたが、後半35分からのキリアン・ムバッペの2ゴールで試合は振り出しに戻る。延長後半に再びアルゼンチンが勝ち越したが、ムバッペのPKでフランスが追いつく。PK戦の末、ついにアルゼンチンが優勝杯を手にした。
アルゼンチンにとっては、36年ぶりのW杯制覇だ。8年前のブラジル大会では、やはり延長戦の末に世界タイトルを逃している。その無冠の時間と悔しさの分だけ、アルゼンチン国民の歓喜は膨らんだ。
カントールさんはSNSで自身が実況する様子を動画で投稿。決まれば優勝となるPKに臨む4人目のキッカー、ゴンサロ・モンティエルにカントールさんの目はくぎ付け。「いけ、モンティエル」と祈るように語った次の瞬間、「ゴーーーール!」。心臓がわしづかみにされたかのように、声を振り絞った。「アルゼンチンが世界王者に!」との実況は、もはや泣き声。解説者らしき隣の男性の腕に抱き着き、「アルゼンチンが世界王者に!」と何度も繰り返した。