■準決勝を盛り上げた2チームの姿勢
12月13日に行われたアルゼンチン×クロアチア、14日のフランス×モロッコ、2つの準決勝は、試合としてとても面白かった。準々決勝のフランス×イングランドはたしかに最高レベルの試合だったが、準決勝の2試合は勝負としてとてもエキサイティングだった。
そうなった理由は、相手と比較すると優勝の経験もなく、まだ世界の「ビッグネーム」とは言えないクロアチアとモロッコが、まったく憶することなく、まっとうに攻撃を組み立てて相手ゴールに迫った点にある。大方の予想に反して、ボールを支配し、相手を守備に追い込んだのはクロアチアとモロッコだった。
フランスはそれでもアントワーヌ・グリーズマンを中心に攻めをつくり、エムバペのスピードを生かして打開しようとしたが、アルゼンチンは逆にクロアチアに攻めさせ、カウンターでクロアチアに打撃を与えようとした。そのサッカーに合わせ、FWにフリアン・アルバレスという選手を起用したのも当たった。アルバレスは少年のようにひたすら前に走り、止まりも転びもせず、相手のものになりそうだったボールを自分の足に当ててボールを運び、2点目を決めた。
しかし先制されても追加点を入れられても、クロアチアもモロッコも試合への態度、勝利への情熱を変えなかった。その姿勢は本当に素晴らしかった。それは、日本、ブラジルを下して準決勝に進出したクロアチア、スペイン、ポルトガルを退けたモロッコの両チームとも、それぞれの準々決勝までの戦いとまったく変わらないアプローチだった。欧州と南米の強豪、ワールドカップで上位を占め続けてきた「ビッグチーム」の「格」や名声、ましてや所属クラブ名などを過剰にリスペクトすることなく、自分たちのもてるものを出し尽くすことだけに集中した準決勝でも共通していた。