モロッコ代表のカタールワールドカップでの冒険は終了した。だが、ＦＩＦＡがツイッター公式アカウントで公開した動画の再生回数がわずか１日で４３０万回を超え、さらに伸び続けてと、その活躍ぶりはまだ続いている。
サプライズの多かった今大会だが、世界を最後まで驚かせたのはモロッコ代表だろう。代表チーム初のベスト８進出を成し遂げたのみならず、アフリカ勢にとって未踏の地だった準決勝へと駒を進めたのだ。
その立役者のひとりが、ゴールを預かったヤシヌ・ブヌだろう。ボール保持率６８％を許したスペイン代表とのラウンド１６、１１本のシュートを放たれたポルトガル代表との準々決勝と、ゴールを許すことなくチームの４強進出を下支えしたのだ。
ポルトガル戦の後では、大会によるプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。「チームのことを思って、うれしいよ」。人柄の良さを感じさせる受賞インタビューだったが、さらなる幸せな光景が広がった。ブヌの腕には、小さな男児の姿があった。愛する息子を抱きながら、インタビューを受けていたのだ。
このインタビューで、かわいらしい坊やは主役に躍り出た。くりくりの目が、インタビュアーが差し出すマイクに吸いつけられている。ブヌが話している間も、興味津々で指でつんつん……。さらには我慢できなくなったのか、顔を寄せてペロリとマイクをなめてしまったのだ。
その瞬間、ブヌは「ええ？」と驚いて、優しいパパの顔になって笑みを広げる。インタビュアーも笑いをこらえられなかったが、プロ意識で「このプレイヤー・オブ・ザ・マッチをチームの誰かに渡せるとしたら、誰にしますか？ その理由は？」と質問を続けて、再びマイクを向ける。だが、父が口を開くより早く、口を近づけたのが小さなブヌだった。最高の動画を完璧に締めくくった。
