■勢いを捨てたオランダ

 もう一つの準々決勝、アルゼンチン対オランダの場合はどうか。

 オランダはラウンド16でアメリカ相手に完勝していたが、グループリーグでも強い相手とは当たっていなかった。一方、アルゼンチンは初戦でサウジアラビアに逆転負けを喫し、2戦目のメキシコ戦も苦戦を強いられたが、この試合をリオネル・メッシの個人能力でモノにして以降、次第にチームがまとまって上向いてきていた。

 そして、メッシのアシストとPKによってアルゼンチンが2点をリードする。

 すると、受けに入ったアルゼンチンに対して、オランダはなりふり構わず、長身選手を前線に並べてパワープレーを仕掛けて1点差とし、さらに後半のアディショナルタイムにFKからのトリックで同点とした。

 もし、延長に入ってからもオランダがそのままパワープレーを続けていたら、アルゼンチンにとっては嫌な展開となっていただろう。だが、オランダはどういうわけか、パワープレーを止めて、パスサッカーに戻ってしまったのだ。

 リードされたチームはギアチェンジをして、リスクを背負ってなりふり構わずに仕掛けるから同点に持ち込むことができる。だが、同点になると、今度は負けるリスクを考えて攻撃の勢いを失ってしまう。

 今回のワールドカップでは、そんな試合が数多く見られた。

 同点ゴールを決めた後も攻撃の矛を収めることなく、一気に逆転を狙い、実際に逆転に成功する……。そんな試合をして見せたからこそ、日本代表の戦いは日本人以外のファンからも支持を受けたのだ。

(3)へ続く
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