■狙いすまされたクロス
この試合でオランダが奪った3得点のうち、最初の2得点もチームの得意な形だ。ともにアシストを記録した右WBのデンゼル・ダンフリースの推進力も魅力だが、クロスも特徴的。敵の最終ラインを押し下げつつ、空いたマイナスのコースに目がけてボールを入れてネットを揺らしている。
グループステージでは、アメリカ戦で見られたマイナスクロスに加えて、GK-DF間へのクロスも再現的に狙っていた。この崩しの形はオランダの大きな武器となっている。
ゴール前での脅威がある一方、オランダは組織としてのビルドアップが特段に優れているわけではない。ショートパスの連続による組み立てを得意としているものの、この試合では右サイドに誘導されてタッチラインに挟まれ、前進を阻まれるというシーンを修正できずにいた。
だが、アメリカ戦で復調したデパイの存在が敵陣侵入へと導いている。この背番号10はライン間でボールを引き出す動きが非常に上手く、それでいて懐に収める能力が高い。そして反転もできる上に、前向きの味方に素早く落とすこともできる。デパイがビルドアップにおける“バグ”を引き起こすことで、チームの攻撃力を高めているのだ。さらにはカウンターの起点にもなれるため、相手としては厄介極まりないだろう。