世界最大のスポーツの祭典に、不要な緊張がもたらされている。アメリカ『CNN』は、イラン代表の選手たちが、国家によって脅されていると報じているのだ。
イランはアジアにおけるサッカー強国のひとつ。ワールドカップ出場は3大会連続6度目となる。カタール大会でも、初戦こそイングランド代表に2-6と大敗したものの、第2戦ではウェールズに2-0と勝利。現在はグループBで2位につけており、現地時間29日にはアメリカ代表とグループ最終戦を戦う。
競技面でも目を引くが、現在世界の注目を集めているのが、大会での“試合前”のイラン代表選手たちの行動だ。
イングランド戦では国歌斉唱の際、選手たちが沈黙を貫いた。その理由は、イラン政府への抗議だと言われている。今年に入りイランでは、治安当局が女性に暴力を振るって死亡させたとして、それを機に国内各地で抗議行動が広がっていた。
そしてイラン代表の選手たちもこの抗議デモを支持。主将のサルダル・アズムンは、代表チーム追放の可能性を認識しながら、抗議の意思を明らかにしていた。チームメイトたちも同様で、イングランド戦で国家を歌わなかったのも、抗議の表明だったようだ。
だが、ウェールズ代表との第2戦では、選手たちは国家を斉唱。ほとんど口を動かさない選手もいれば、明らかに嫌そうな表情をしている選手もいた。
イランの選手たちが初戦から態度を変えた衝撃的な理由を、アメリカ『CNN』が報道。何と、選手たちは当局から、家族を傷つけるという脅迫を受けていたというのだ。
報じられたところによると、選手たちはイングランド戦後、親衛隊的側面を持つ軍隊組織であるイスラム革命防衛隊に呼び出されたとのこと。そこで、国歌を歌わなければ家族を収監したり、拷問すると脅されたという。その苦悩が、ウェールズ戦で口を開かされた選手たちの表情に浮かんでいたのだ。