サッカーは時代とともに変化していく。競技だけではなく、取り巻く環境も変化していう。蹴球放浪家・後藤健生は、その荒波をかいくぐってワールドカップ取材を続けてきた。その過程では、驚くべき光景も目にしてきたのだ。
■なぜここに日本代表が?
さて、スペイン大会の決勝は7月11日にサンチャゴ・ベルナベウで行われました。
2次リーグで“黄金の4人”を擁するテレ・サンターナ監督のブラジルと、ディエゴ・マラドーナのワールドカップ・デビューとなったアルゼンチンを相次いで倒して勝ち上がってきたイタリア代表が、西ドイツを破って3度目の優勝を遂げました。
その試合前にスタジアム周辺を歩いていると、ダフ屋行為をしている数人の日本人を見かけました。見覚えのある顔が並んでいました。よく見ると、それは日本代表選手たちだったのです。
現在は、日本代表選手はワールドカップに参加するために現地を訪れます。そして、敗退したらすぐに帰国したり、各所属クラブに戻っていきます。
しかし、1980年代の日本代表はアジア予選を突破することができず、ワールドカップに参加したことは一度もありませんでした。1982年大会も1980年12月に香港で開かれたアジア1次予選で敗退しています(内容的には素晴らしい試合をしたのですが)。
では、なぜ日本代表選手たちはサンチャゴ・ベルナベウの前にいたのでしょうか……。