■アイルランドの猛抗議
当然、アイルランドは猛抗議をした。しかしスウェーデン人のマルティン・ハンソン主審は出来事が見える角度にはおらず、見えるとしたら第2副審のフレドリック・ニルソンだったが、アイルランドGKやDFたち、そして得点したギャラスの陰になり、彼もはっきりと見ることはできなかったようだった。
試合後、アンリは自分の手に当たったことを認めたが、偶発的なもので、自分はレフェリーではないから当然プレーを続けたと語った。だがこのゴールによってフランスとアイルランドの明暗が大きく分かれたことを考え、再試合が適当だとも話した。
アイルランド協会も再試合を要求した。しかしワールドカップの組分け抽選会は16日後に迫っており、次の国際試合日は翌年の3月までなかった。再試合が不可能であることは、誰の目にも明らかだった。そこで次にアイルランド協会が求めたのは、「33番目のチームとしてのワールドカップ参加」だった。だがもちろんこれも現実的ではなかった。結局アイルランド協会は、「主審の決定は最終的」というサッカーの根本的な考え方を受け入れるしかなかった。