■「意図的」の5つのポイント
それから1世紀半近く、2016年まで、「競技規則」における「ハンドリング」の定義はごく簡単なものだった。
「ボールを意図的に手または腕で扱う(Handle the ball delievrately)」(第12条)
それだけである。もちろんこの後に、自陣ペナルティーエリアにいるGKが例外であるということが「カッコ」付きで書かれているが…。
ただしこのころの「競技規則」には、「競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン」という詳細な解説が付属しており、「意図的に」の解釈として次の5点に考慮しなければならないとしている。
1 ボールが手や腕の方向に動いているのではなく、手や腕がボールの方向に動く。
2 相手競技者とボールの距離(予期していないボール)
3 手や腕の位置だけで、反則とはみなされない。
4 手に持った衣服やすね当てなどでボールに触れることは、反則とみなされる。
5 サッカーシューズやすね当てなどを投げてボールにぶつけることは、反則とみなされる。
こうしたシンプルな「ハンドリング」のルールの下で、大きなスキャンダルが2つ生まれた。1986年ワールドカップ準々決勝でのディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン)の「神の手」事件、そして2010年ワールドカップ欧州予選プレーオフでのティエリ・アンリ(フランス)のハンド事件である。