■「ハンド」は和製英語

 ルール(正しくは「サッカー競技規則」)第12条に、相手チームに直接フリーキックが与えられる反則のひとつとして、「ハンドの反則を行う(自分のペナルティーエリア内でゴールキーパーが手や腕でボールに触れた場合を除く)」とされている。

 ところで、英語で言う「hand」とは手首から先の部分を指し、手首から肩までは「アーム」である。日本サッカー協会が発行している日本語版「競技規則」の元となっているIFAB(国際サッカー評議会)発行の英語版の「Laws of the Game」を見ると、「a handball offence」となっている。サッカーとはまったく別の「ハンドボール」という競技があるが、日本では選手たちが「ハンド、ハンド!」と叫ぶとき、英語圏の選手たちは「Handball!」と叫ぶ。その「通称」あるいは「俗称」が、競技規則でもそのまま使われているのである。

 だが古いファンなら、「ハンド」は「ハンドリング」であることを知っているだろう。表現が大幅に直される前の「2015/16版」の競技規則では、「handle the ball」となっている。現在のルールでも、最初の表現のあとに出てくる詳細な説明では「handling the ball」という折り目正しい表現が使われている。

 「handle」という英語は、もちろん「hand」からの派生語だが、手を使ってものを扱うという意味をもっている。日本語訳の競技規則で言う「ハンドの反則」のカタカナの部分は、いわゆる「和製英語」あるいは「正しい英語表現の短縮形」で、「hand」という言葉を動詞として使う場合には「手渡す」というような意味になる。「handling」はけっして「handing」ではないのである。

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