大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第101回「“ハンドボール”とはなんぞや?」(1) 初期のサッカーでは許されていた手でのキャッチの画像
かつてはフィールドプレーヤーも手を使用したボールキャッチが許されていた 撮影/原壮史

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、PKか否か、境界は脇の下の最も奥の位置?

■不可解な反則「ハンド」

 サッカーになじみの薄い人にとって、ルールで最もわかりにくいのはオフサイド――。ずっとそう思われてきた。しかしビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)というものがときにサッカーの主役になった現在、オフサイドは明白な「事実」となってしまった。いま、まったく不可解なのは「ハンド」である。

 偶発的に手に当たったボールをシュートしてゴールにはいっても得点は認められないがそれを味方にパスして得点になったら認められる? シュートをブロックしようとして倒れ込んだとき、自分の体を守るために支えようとグラウンドについた手にボールが当たっても反則にはならない? でもその手は少し広がっていたらPK? DAZNの「ジャッジリプレー」の家本政明さんも「う~ん、どっちかな?」という状況が続出するハンドの反則。私たちはいま、不可解の迷宮にさまよいこんでしまった。

 「サッカーとはどんな競技か」という質問をすれば、多くの人が「手を使ってはならないスポーツ」と答えるに違いない。まさにそのとおりで、「フットボール」と名のつく競技は数多くあっても、大半がボールを手でキャッチしたり、ボールをつかんだまま走ったりすることを認める。それどころか、主体にしている。

 「アメリカン・フットボール」にいたっては、足でのキックは、キックオフやフィールドゴールなどごく限られた状況にしか使われない。選手の大半はボールをけることなどなく(ときにはボールに触れることさえなく)、試合(もしかしたら選手生活まで)を終える。「フットボール」はどこに行ったのか? 

 サッカーだけが違う。サッカーは大半のプレーが足で行われる。頭や胸などでのプレーも可能だが、おそらくボールコンタクトの95パーセント以上は足首より下、すなわちまさしく「フット」の部分で行われるのである。そして手でボールを扱うことは、原則的に反則として罰せられるのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3