J1参入プレーオフの1回戦、ロアッソ熊本と大分トリニータの試合は、最後の最後までどちらが勝ち上がるか分からない激戦となった。このゲームを見た人々は、サッカーの面白さと恐ろしさにあらためて驚いている。
熊本にとっては初のJ1昇格へ、大分にとっては1年でのJ1復帰へ、ともに負けられない一戦だった。その多くが懸かるゲームは、まさに筋書きの読めないドラマとなった。
試合はいきなり動いた。開始1分も経たずして、大分FW伊佐耕平が先制点を決めたのだ。GK高木駿のフィードから始まり、最後はこぼれ球を押し込む格好になった。
この先制点の受け止め方が難しいところだ。大分にとっては、心強いゴールであることは間違いない。一方で熊本にとっては、まだ十分に時間は残っていた。
両チームの状況も確認しておくべきだろう。この試合は、熊本のホームで行われていた。それは、熊本が大分よりもリーグ戦を上位で終えたことを表している。もちろん勝ったチームが2回戦に進めるが、同点で終わった場合には、上位である熊本が勝ち上がることになっていた。
あまりに早すぎる先制点の後、試合は長く動かなかった。放ったシュート本数は熊本が11本で、大分が10本。1点差で進んだゲームは、終盤に激しく動き出すことになる。
熊本としては、とにかくゴールを奪わなければならない。後半42分、その思いが結実する。大分の先制点のように、起点はGK。フィードは前線へと一気に通り、熊本がフリックで前線へ流すことに成功する。相手DFより一瞬早くボールに触れた坂本亘基はGKをかわし、同点ゴールを蹴り込んだ。
このゴールが、さらに試合を動かした。アディショナルタイムに入っていたが、熊本は攻めの気持ちを失わない。前に出た大分の裏を突き、さらにゴールを目指す。ボックス手前で5分前に得点していた坂本がボールを受けると、冷静に周囲を把握してパス。粟飯原尚平のシュートはポストをかすめ、ゴールネットを揺らした。