■1972年のイギリスにて

「急ぐ人のために片側を開ける」という風習を僕が初めて目にしたのは、フジテレビでやっていた「クイズグランプリ」という番組で優勝して、その賞品として1972年の秋に初めて海外(ヨーロッパ6か国の旅)に行った時のことでした。

 コペンハーゲン経由で英国のロンドンに到着。アーセナル・スタジアム(ハイバリー)でアーセナル対マンチェスター・シティの試合を観戦しましたが、これが僕にとっての初海外サッカー観戦でした(「蹴球放浪記」第43回「初めての海外、初めての海外サッカー観戦」の巻参照)。

 その時にロンドン名物の地下鉄の駅やデパートでエスカレーターに乗ろうとしたら、利用者が片側に立っている光景に出くわしたのです。急ぐ人が開いている片側を急ぎ足で上っていきます。

「あ、これ、いいなぁ。さすが文明国……」と、僕は感心しました。

 実は日本でもすでに1967年に阪急電鉄が「片側開け」を呼びかけていたんだそうですが、1970年代の初め、東京では(僕の知っている限り)こういう風習はなかったのです。

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