取材をすれば、さまざまな人に出会う。時には、思いもしない出会いもまっているものだ。蹴球放浪家・後藤健生が出向いた韓国には、世が世ならば出会えなかったであろう人物が「働いて」いた。
■「イ」ではなく「リ」の意味
渡された名刺には漢字で「李鎬昇」とありました。
それで、僕は「多少は韓国語が分かるんだよ」というところを見せよう思って、「ああ、イ・ホスン氏ですね」と韓国語の発音で読んでみせました。
すると、李鎬昇氏はこう言ったのです。
「私は“イ”ではなく、“リ”と読むのです。王家の李ですから」
ご承知の方も多いでしょう。李さんは金(キム)さんや朴(パク)さんと並んで韓国で最も一般的な姓であり、そして普通は「イ」と読むのです。
というのは、韓国語が属しているウラル・アルタイ語族の言語では語頭に「R」の音が来ないという規則があるからです。