■日本にもスペインにもある読み方の特徴

 韓国南西部の全羅道に「羅州」という街があります(正確に言えば、「全州」という街と「羅州」という街があるのでその地域が「全羅道」と呼ばれているわけですが)。「羅」という文字が語頭に来ていますから、この都市名は「ラジュ」ではなく「ナジュ」と読むのです。「全羅道」の場合は、「羅」は語頭にありませんから「ラ」と読みます。

 こういうことは、どこの国の言葉にもあります。

 日本語も韓国語と同じウラル・アルタイ語族と思われますが(異説あり)、漢字を取り入れるときに「R」の音を発音することにしたのでラ行で始まる言葉はたくさんあります(だから、日本語では「李」は「り」と発音します)。ただし、ラ行で始まる日本語の単語のほとんどは漢字語か西洋言語由来の外来語=カタカナ語のはずです。

 しかし、日本語では今でも母音の付いていない「N」や「M」(つまり「ん」)は語頭に来ません。ですから、Patrick Mbоmaは「エンボマ」という表記で登録されましたし、Kylian Mbappeは「エンバペ」と表記されたり「ムバッペ」と表記されたりするわけです。本当は「ンボマ」、「ンバッペ」の方が本来の発音に近いでしょう。

 ちなみに、イベリア半島に英語では「スペイン」、イタリア語では「スパーニャ」と呼ばれる国がありますが、本国では「エスパーニャ」です。スペイン語では語頭に「S」がくる場合、「エス」と発音するからです。オランダ人のヴェスレイ・スナイデル選手は、レアル・マドリードに所属していた時は「エスナイデル」でした。

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