後藤健生の「蹴球放浪記」第125回「南仏プロヴァンスで出会った驚きのホヤ」の巻(1)なぜ「海藻は和食」と思い込んでしまうのかの画像
釜山で玄界灘を眺めながらホヤを食す 提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生は、世界中を取材で駆け巡る。取材の対象は、サッカーだけにとどまらない。食事を含めた文化面もフィールドワークの対象とする。調査を進めると、日本もフランスも、ある食材でつながっていることが判明した。

■スペインでも食べられる「コンブ」

 スペイン北西部のア・コルーニャの街に行った時のことです(一般には「ラ・コルーニャ」として知られていますが、これは、いわばスペインの標準語であるカスティージャ語。現地のガリシア語では「ア」コルーニャ)。海岸を歩いていたら、現地の人たちが総出で採ったばかりの海藻を干していました。どうやら昆布のようです。

「海藻」というと和食のイメージが強いですよね。今では世界中で海藻は健康食品として親しまれていますが、ヨーロッパでも日本語のまま「コンブ」とか「ヒジキ」という商品名で売られています。しかし、ア・コルーニャでは普通に昆布を食べているようです。

 ちなみに、僕は日本人なのですが、どういうわけか海藻類が大の苦手。それで、歩いていたら昆布の臭いにすぐに反応したというわけです。

 海産物というのは、場所によって採れるものが違っているので、旅行しているとその国の、その街の独特の食材を食べるのが楽しみです(残念ながら、ア・コルーニャ名物(?)の昆布は僕はパスしましたが……)。

 そもそも、僕たちはなぜ「海藻は和食」と思い込んでいるのでしょうか?

 それは、日本という国が海に囲まれた島国で、しかも各地の海の多様性が大きいからです。日本近海には暖流も寒流も流れていますし、遠浅の海もあれば、駿河湾や富山湾のような深海も間近にあり、さまざまな海産物が採れます(「採れていました」と言うようにならなければいいのですが)。

 だから、日本人は昔からさまざまな海産物を、さまざまな調理法でたくさん食べていましたし、今では、スシは世界中で食べられています。

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