Jリーグ戦では16位と首位。そんな神戸とマリノスによるACLラウンド16は、普段同じリーグで戦っているチーム同士の試合ならではの、リーグ戦との違いが鍵を握ることになる試合となった。
「前半、自分たちのやり方が、ボールを持っている時も持っていない時も表現できなかった」
試合後、マリノスのケヴィン・マスカット監督はそう悔しがった。
その言葉通り、前半は神戸のものだった。試合開始間もない時間帯や先制された直後、2点目を奪われた直後、といったフラットな状態からスタートする場面ではマリノスがチャンスを作り、うち1回はゴールネットを揺らしもしたが、主導権を握って押し込み攻撃力を見せつける、といういつもの姿を見せることはできなかった。
神戸がその試合展開に持ち込めた大きな理由は2つあった。
1つ目は、自分たちが理想として持っている戦い方ではなく、現実的な戦い方を吉田孝行監督が採用したことだ。
負傷明けのアンドレス・イニエスタに無理をさせずベンチスタートとした神戸は、最終ラインからのビルドアップではなく、ゴールキーパーの前川黛也から大きく前へボールを飛ばした。ターゲットはもちろん大迫勇也で、力強さを取り戻しつつある背番号10は見事にボールを収め、神戸が攻撃のスイッチを入れることに成功した。