大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第95回「増える一方の『ベンチスタート』」(1)驚くほどに鈍かったJリーグの動きの裏にある理由の画像
香川真司などが活躍するベルギー・シントトロイデンのチームベンチ。ホーム用(手前)の椅子はクラブカラーに塗られている。(c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「チーム役員、交代要員および交代して退いた競技者の座席」―。

■カタールは大慌て!?

 もしかしたら、ワールドカップ・カタール大会の地元組織委員会は、大慌てしているのではないだろうか。

 11月21日に開幕するワールドカップで使用するスタジアムの大半はすでに完成し、いくつもの試合で使われて、テスト結果も上々だ。残すはただひとつ、決勝戦が行われるルサイル・スタジアムだが、これもすでに完成し、9月にこけら落としの試合が行われることになっている。ところが、大会まで半年を切った時点で、いきなり「仕様」が変わってしまったのだ。

 チームベンチである。大会規定では、選手23人、ベンチ入り可能な役員は11人ということになっている。選手11人はピッチに出ているから、23人が座れるベンチがあればいいということになる。しかし6月になって国際サッカー連盟(FIFA)は大会規約を変更、登録選手数を26人とした。当然、ベンチの収容数も3人分増やさなければならないことになったはずなのである。

 椅子を3個増やせばいい? そんな簡単なものではない。競技場によって違うが、ベンチは観客席(あるいはその下)に組み込むか、ピッチサイドに固定されているか、あるいは移動式のものをもってくるという形になっている。組み込み式ではスペースが限られている。固定式や移動式も、椅子と、それを覆う「シェル」がセットになっているため、簡単には増やすことができないのだ。

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