■もっとも犠牲になったのは細谷だろう
中国が引いて守りを固めようとすることも、最初からわかっていたはずだった。
試合展開によって最も犠牲になったのは、人口密度が高まった最前線中央でのプレーとなった細谷真大だろう。流れてボールを引き出したり、DFと競り合いながらスペースに出たボールを追いかけたり、という大きな動きが許される展開ではなく、持ち味を発揮することができなかった。決定機を逸してしまったことは大きな後悔として残るが、それ以外でも苦しい試合になってしまった。
攻撃陣で最も優れたパフォーマンスを披露したのが、普段のポジションに近い位置かつ川崎の試合でよくある状況、となった脇坂だったことを考えると、選手の配置や試合展開とのミスマッチによる自滅、という印象がさらに濃くなる。香港戦からスタメンを総入れ替えし、できるだけ多くの選手にアピールの機会を与える、という目的はメンバー表上は叶ったが、アピールしにくい環境だった選手も多かった。
もっとも、そういう困難の中で何ができるのか、というのが代表に生き残るために必要なこと、という見方もできる。普段と違う、でも輝いてみせる選手でなければ、限られた枠に滑り込むことはできないだろう。当然、その過程ではエンターテインメント性は考慮されない。
しかし、PK戦を求める子どもたちの声は『サッカーを“わざわざ現地で”見ること』に何が求められているのか考えさせるものだった。この試合に足を運ぶことを選んだ10526人のうち、いったいどれくらいの人が『また来たい』と思えただろうか。
3戦目は韓国戦。日本が優勝するためには勝つしかない。大会前に「国内サッカーの価値を上げる戦いをしたい」と語っていた森保一監督は、勝利こそ最大のファンサービス、という状況になった試合でどういう戦い方を見せるだろうか。この試合で悔しさが強く残った細谷や森島に加えて、試合終了間際のベンチで立ち上がって声を飛ばしていた藤田譲瑠チマや谷晃生ら、この試合を外から見ていた選手たちの奮起に期待したい。
■試合結果
日本 0―0 中国