34歳のベテランは語った「プロ生活がこれで終わってもいい」【なぜベテラン・ジャーナリストはパリ・サンジェルマンではなく天皇杯取材を選んだのか】(2)の画像
劇的な展開となった天皇杯 撮影:原悦生(SONY α9Ⅱ使用)

 パリ・サンジェルマンが来日中だ。Jリーグでもほとんど行われない地上波で放送され、国立競技場のスタンドは観客であふれた。そのきらびやかな試合ではなく、サッカージャーナリスト・大住良之は天皇杯取材へ向かった。その理由には、耳を傾けるべき重みがある。

■残り10分からの劇的な展開

 試合はややジュビロ磐田が攻勢ながらも一進一退のまま両チーム無得点で終盤を迎えたが、残り10分を切ったところで東京ヴェルディがPKのチャンスを得、FW新井瑞希が決めて先制。東京Vの城福浩監督は左FWの新井に代えて本来はサイドバックの奈良輪雄太を、そしてMF森田晃樹に代えてMF西谷亮を投入。逃げ切りにかかる。

 だが「5分間」と示されたアディショナルタイムが2分を経過したとき、相手陣でボールを奪った磐田が左に展開。DF松本昌也がクロスを入れると、「パワープレー」で最前線に残っていたセンターバックの伊藤槙人がファーポストから頭で折り返す。ニアポストにいたのはFWジャーメイン良。彼も東京Vの選手たちのように90分間相手を追い続け、疲れ切っていたはずだが、目の前にきたボールにかろうじて反応した。そしてまるで幼稚園児のように頭を突き出してヘディングすると、ボールはゆっくりと東京Vのゴールの右隅に吸い込まれた。

 延長戦を前に東京Vの城福監督は最後の交代カード、「6人目(延長戦では許される)」を切り、DFの山口を左MFとして送り込む。右MFはハーフタイムに投入されたMFバスケス・バイロン。そして「2トップ」に並んだのは、投入されたばかりのMF(本来はアンカー)西谷と奈良輪だった。

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