7月19日に行なわれたE―1選手権の初戦・香港戦。サッカー日本代表は相馬勇紀や町野修斗などのゴールで6-0と大勝を飾った。その試合を、2008から2019年までの12年間、スペインの地で指導者を務め、数々の実績を残してきた「世界のトップを肌で知る男」坪井健太郎さんに分析してもらった。(#1、2のうち2)
【プロフィール】坪井健太郎 つぼい・けんたろう 1982年、静岡県浜松市生まれ。静岡学園卒業後、指導者の道へ進む。安芸FCや清水エスパルスの普及部で指導経験を積み、2008年にスペインへ渡る。バルセロナのCEエウロパやUEコルネジャで育成年代のコーチを務め、リーグ優勝・昇格を経験。2018-19シーズンにはユース1部のカテゴリであるディビシオン・デ・オノールで FCバルセロナやRCDエスパニョール、RCDマジョルカといったプロクラブが戦うリーグで6位という上位争いに食い込んだ経験を持つ。『サッカーの新しい教科書 戦術とは問題を解決する行為である』『サッカー 新しい守備の教科書』『サッカー新しい攻撃の教科書』(いずれもカンゼン刊)が大好評発売中。
■同一クラブから計7人が招集されているわけ
香港戦では、FW西村拓真、MF藤田譲瑠チマ、水沼宏太、岩田智輝、DF畠中槙之輔と横浜F・マリノスの選手がスターティングメンバーに5人も先発出場。また、ベンチスタートとなった宮市亮と小池龍太を含めると、今回の招集メンバーには横浜FMから最多となる7人が選ばれている。この現象について坪井さんは、自身の体験談を交えて解説してくれた。
「個人が評価されるというのは、やはり所属クラブがリーグでいい戦いをしているからだと思います。好調なチームから選抜チームに選手が多く選ばれるということに関しては、自分もスペインで似たような経験をしました。
僕が住んでいたバルセロナではカタルーニャ州選抜というのがあるんですけど、優勝争いをしていたシーズンは州選抜に選ばれる選手の数が多かったですね。元々呼ばれていなかったような選手も招集されるようになりました。そのときのチームの監督が、『チームのために戦っている選手がチームを良くすることで、結果的にその選手が評価されるんだよ』と言っていました。その言葉にはすごく納得しましたね。
チームが先か個人が先か、という話ではなくて、その2つは相互作用。どんなに能力が高い選手が集まっていても、エゴを出している選手の集合体のようなチームは機能しません。チームに貢献できるようなプレーで自分の能力を発揮することが重要なんです。それが、結果的に個人の評価につながると。これと似たような現象が、現在J1リーグで首位を走る横浜FMにも起きているのかなと思いますね」