しかし、その後、三笘薫田中碧旗手怜央と川崎の攻撃を支えていた中心選手たちが相次いで海外に移籍していった(こうした選手たちがそのまま川崎でプレーを続けていたらどんな強いチームになったのか……。そのことは、最近の日本代表の試合を見れば一目瞭然である)。

 さらに、大島僚太も昨シーズンはケガで離脱が続いた。今シーズンに入ってからも、大島が再び戦列を離れ、ジェジエウ登里享平がケガで離脱。守備陣も苦しいやり繰りとなっていた。

■川崎の選手たちが入れたスイッチ

 それでも、しぶとい試合運びで勝点を拾いながら首位争いに絡んでいたのはさすがだったが、それは川崎本来の形ではなかった。そして、迎えた5月後半の戦いぶりを見ると「3連覇」に向けては“赤に近い黄信号”が点ったようにも思えた。

 そんな時に、日本代表の活動による中断期間を迎えたのだ。鬼木監督にとっては、大きな“救い”となる中断だった。

 鬼木監督が強調したのは「攻撃の回数を増やす。守備の強度を上げる」という当たり前のこと。「相手の対策云々よりも、自分たちの良さを出すこと」が大事だというのだ。

 結果が出ないと、川崎ほどのチームでも選手たちの気持ちには揺れが生じてしまう。中断期間には、そんな気持ちを立て直し、自分たちの良さを見つめ直したということだろう。

 実際、中断明けの札幌戦の川崎には“川崎らしさ”が戻ってきた。

 試合の流れはけっして良いものではなかった。札幌に2度にわたってリードされてしまったのだ。選手たちのメンタルが弱い状態だったら、リスタートをしようという意気込みでの再開初戦で失点を繰り返したことによって気持ちが落ちてしまいかねないところだ。だが、この試合、失点するたびに川崎の選手たちの気持ちにスイッチが入って攻めの迫力が増していった。

 札幌が先行することによって、逆に川崎が本来の川崎らしい攻撃の迫力を取り戻していったとも言える。もし、この試合がきっかけとなって川崎が攻撃力を取り戻して「3連覇」を達成したとしたら、川崎は札幌にむしろ感謝すべきなのかもしれない。

(2)へ続く
  1. 1
  2. 2
  3. 3