■合間に流れた不穏なニュース
到着の翌日、僕は香港サッカー協会(香港足球総会有限公司)に行ってみたのですが、帰りにはバスも停まってしまってホテルに戻るのも一苦労でした。この頃、警報は「△△8NE」に変わっていました。漢字にすると「烈風或暴風由東北方吹襲」。つまり、北東からの暴風が吹くということです。
午後になると、警報は「▼▼8SE」(烈風或暴風由東南方吹襲)に変わりました。同じ暴風でも風向きが変わった=香港南方を台風が通り過ぎたということです。
土曜日の夜、テレビではFAカップ決勝を生中継していました。当時の日本では海外の試合の生中継などありませんから羨ましい限りでした。試合は、リヴァプール対エヴァートンのマージーサイドダービー。延長戦の末、イアン・ラッシュの決勝ゴールが決まってリヴァプールが3対2で勝利しました。
合間には、「北京で戒厳令布告」という臨時ニュースも流れてきました。
中国では、1987年に保守派と対立して失脚した「改革派」の胡耀邦前総書記が4月に死去したことをきっかけに、学生たちの民主化運動が盛んになっていたのです。それに対して、共産党独裁を維持しようとする鄧小平らの保守派が戒厳令を布いたというわけです。中国の李鵬首相は演説で学生たちの民主化要求デモを「動乱」と決めつけました。