■日本人記者団を襲ったトラブル

 フィリップ・トルシエ監督率いるU-20日本代表はグループリーグの第2戦からラウンド16までは北東部の高原都市バウチで戦っていました。ラウンド16のポルトガル戦の前日、日本人記者団はカノ(日本の初戦が行われた都市)まで行ってナイジェリア対アイルランド戦を見ようということになり、組織委員会でバスを手配してもらってカノに向かいました。

 ところが、スタジアムの直前でガス欠になってバスが動かなくなってしまったのです(当時、ガソリン価格が非常に高かったので、運転手たちはギリギリの量しか燃料を入れていなかったのです)。スタジアムはすぐに見えました。そこで、バスを降りて走ってスタジアムに向かったのです。

 ところが、入口で警備していた兵隊たちは、群衆が殺到するのを防ぐために鉄の門を閉めようとしていて、記者団にも「入るな」というのです。そこで、しかたなく、日本人記者団は鉄の門をこじ開けて、兵隊たちを押しのけてスタジアムまで突進したのです。

 リーダーはフランスのパリ在住のスポーツカメラマン、M月次朗さん。アフリカ取材にも何度も来ているM月さんはこういう修羅場も得意でした。なにしろ「前にもナイジェリアに来た事あるんですか?」と聞いたら、「ビアフラ戦争以来だ」というのですから、たいへんな強者です(「ビアフラ戦争」は石油資源を持つ東部州が独立しようとして1967年に始まった内戦で、飢餓や虐殺などで150万人以上のイボ人が犠牲となった)。

  1. 1
  2. 2
  3. 3