■選手たちが見せる外界からの逃避行動

 シュート失敗後の彼のジェスチャーも、多くのファンは「それが何か?」と思うだろう。最近のサッカーでは、欧州でもJリーグでも、ごく普通に見られる光景だからだ。だが私には、最近とみにこうしたジェスチャーが増え、その「強度」も強くなっているように感られてならない。そしてこうしたジェスチャーにこそ、点が取れない原因のひとつがあるのではないかと思っている。

 頭をかかえる、両手で顔を覆う、天を向く、目を力いっぱいつむる、下を向く―。英国の人気ライター、デズモンド・モリスは、1981年に世界的なベストセラーになった『The Soccer Tribe』 (邦題『サッカー人間学~マンウォッチングⅡ~』1983年小学館刊)において、これらの行動を「遮断」のジェスチャーとしている。外界からの情報をシャットアウトし、直前に起こった「悲劇」に直面することを回避する。そしてそれによって、無意識のように自分を慰めようとしているのだという。

 すなわち、「決定的なチャンスだったのに、シュートを失敗してしまった」という事実を、瞬間的にでも否定しよう、なかったことにしようというのが、こうしたジェスチャーなのだ。「遮断」の後には、パスが悪かった。グラウンドが悪くボールがはずんだ、GKのまぐれ当たりなどと、「言い訳」がくる。そこまでいって、ようやく立ち上がるのである。

(2)へ続く
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