■92分30秒の両者のハイレベルな攻防!
そして、今回の両者の直接対決のハイライトは、92分を30秒ほど回ったところであった。浦和左サイドの松尾佑介からの浮き球のパスを、東京のペナルティーエリア内右寄りのところで受けた酒井は、右足でトラップ。ゴールへのコースを塞ぎ、正面に立つのは長友。
酒井は少しキックモーションを入れてからタテにボールを持ち出す。そこでさらに軽くシュートフェイントを入れ、もう一度、タテに進む。シュートが放たれ、それが良いコースに飛べば、決勝点が決まる緊迫の場面。しかし、焦る様子など皆無の長友はボールから目を離さず、体のバランスを崩すことなく、最後はスライディングで酒井のキックを弾き返して見せたのだ。
終了直前の94分40秒頃に最後のマッチアップがあった。このときも斜めのパスを東京のペナルティーエリア右側で受けた酒井だが、長友を前にタテの選択はせず、左足に持ち替え、シュートを放ったが、大きく枠を外してしまった。
攻める酒井、守る長友、後半残り15分間にあった3度のマッチアップは、今回は長友の守備が上回ったと言えるのかもしれない。ただ、体力の残るアダイウトンの攻撃を止めた上に、81分からは右ウイングのような攻撃性能を見せた酒井のタフネスぶりには、目を見張るものがあったと言えるだろう。
初夏を思わせる暑い陽気、緊張感、インテンシティの高い戦いで、後半、多くの選手がピッチに倒れた。その激しい一戦であった集中力と緊迫感がみなぎった長友と酒井の直接対決は、ベテラン健在、そしてカタールワールドカップを決めたサッカー日本代表の矜持を見せたものだったのではないだろうか。
試合終了後、両チームが挨拶を交わした際、2人は2度ボディタッチをし、その間、会話をしていた。ワールドカップまであと7か月。両者の視線の先には、激戦の舞台、カタールの地が見えているだろうか――。