5人交代制ならば生まれなかったかもしれない「ジョホールバルの歓喜」【5人交代制でサッカーはどう変わったか、そしてどう変わるか】(3)の画像
ジョホールバルでの岡田監督の思い切りがなければ、南アW杯の16強進出もなかったかもしれない 撮影:渡辺航滋

 新型コロナウイルスは、世界中に大きな影響を与えた。サッカーの世界も、その例に漏れない。ただし、その変化はサッカーを進化させる可能性もある。
「5人交代制」はサッカーに何をもたらし、どんな未来をつくり得るのか。サッカージャーナリスト・大住良之が考察する。

■勝利を呼んだ2人同時交代

 交代人数は1990年代半ばに3人に増やされたが、通常の場合、「戦術的」に使われるのは2人目までで、3人目はアクシデントに備えて試合終盤までとっておかれる。

 1997年11月16日、あの「ジョホールバル」で、90分終了後、延長戦までの5分間をピッチ上で過ごす間、日本代表岡田武史監督は迷いに迷った。すでに後半18分に2人の交代を送り出していた。中山雅史に代えて呂比須ワグナー、三浦知良(カズ)に代えて城彰二。ヘディングの得意な呂比須、絶好調の城を先発で使うという手段もあったが、イランのDFの厳しいフィジカルチェックに耐えられる強さはまだなかった。だから中山とカズを先発させることに迷いはなかった。

 しかし前半に中山のゴールで先制した日本だったが、後半立ち上がりに連続失点を喫し、1-2と逆転されていた。士気が落ちたと見た岡田監督はFWをふたり一挙に代えてチームに刺激を与えることを決断した。この交代が功を奏し、日本は後半31分に城のヘディングシュートで2-2の同点に追いつく。

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