■イランが施していた戦術的交代

「3人目」をGKやDFのケガなどのアクシデントに備えた「安全弁」として使うのではなく、疲れ切った相手の足にフレッシュそのものの、しかも日本サッカー史上屈指のスピードをもった足をぶつけるという「3人目」まで戦術的に使った岡田監督の決断が、日本サッカーに新しい歴史をもたらしたのだった。

 もしこのとき5人の交代、さらに延長戦にはいってからは6人目も投入できるという現在のルールなら、岡田監督は何も迷うことなく、ノーマルタイムの後半35分ごろには岡野を送り込んでいたかもしれない。しかしまた、イランも、岡野に対抗すべく、「フレッシュな足」を送り出し、あれほどやすやすと守備を突破されることもなかったかもしれない。

 ちなみに、この試合、イランは後半の34分までに3人の交代を使い切っている。最初は1-1で迎えた後半の9分に攻撃強化で3バックから4バックに変えるときに使い、2回目は2-1と逆転した後、日本が呂比須と城を送り込んできたタイミングで、再び3バックにするために使った。ともに「戦術的交代」である。そして3人目は、その直前にGKのアハマド・アベドザデが足を痛めて治療していたにもかかわらず、疲労の色が濃かったボランチを交代させている。

(4)へ続く
  1. 1
  2. 2
  3. 3