■大衆食堂と高級レストランの「うまい」の違い
北京でも、一人で歩いていたら、日本語を勉強している学生というのが現われて、「その辺の食堂で一緒に昼食を食べよう」ということになり、東風広場の「民族飯荘」という店の1階の食堂で食事をしました。
当時の中国は食事の内容もまだ貧しい時代でした。どれを食べても甘い味付けなのです。「甘い=うまい」という感覚なのでしょう。だから、「うまいか?」と尋ねられても「う~~ん」と曖昧な言葉を発するしかありませんでした。
その夜のこと、池井教授の知り合いの中国外務省の幹部との会食があるというので同行しました。すると、なんと昼に行ったのと同じ「民族飯荘」に連れて行かれたのです。
「やれやれ、またかいな」と思っていたら、今度は2階に上がって行きます。
そうです。1階は大衆食堂でしたが、2階は高級レストランだったのです。もちろん、甘い味付けではありません。高級中華をご馳走になり、茅台酒をしこたまいただき、デザートには有名なハミ(哈密)の瓜まで出てきました。哈密は新疆ウイグル自治区のオアシス都市(ウイグル語でクルム)で盆地特有の暑さのおかげで美味しい瓜が獲れるのです。