■眠れない夜を越えて
藤川さんの同期には、プロ志望の選手も多かった。全国の舞台に立つことで開けるかもしれない夢が、思わぬミスで崩れ去った。夏から無敗ロードを歩み続けて膨れ上がった自信の分だけ、苦楽を共にした時間の濃密さの分だけ、その一言は藤川さん自身にとっても痛恨となってしまったという。
卒業して慶應大学に進んでからも、夜中に思い出しては目が覚めた。新しい年が来ても、悪夢は消えなかった。「さすがに、これがずっと続くのはしんどいと思いました」。
インターネット上で同期だけに限定公開した数千文字の言葉に、すべての思いと謝罪の気持ちを注いだ。かつてのチームメイトたちからも、感情的になってしまった自分の反応を冷静に省みるコメントをくれた。
「それでだいぶ体が軽くなった感じはありました」。大学生活も、折り返し点を過ぎていた。同じ頃、板倉はプロ選手としての苦しみを人知れず抱えていた。思えば、この頃から2人の思いがシンクロしはじめたのかもしれない。