またしても、準決勝だった。雨の中の試合で、対戦相手は日大藤沢高校だった。
先を見過ぎていたのかもしれない。その気持ちが、藤川さんの歯車を狂わせた。
ゴール前に入ってきたクロスの処理に移った藤川さんの頭の中には、キャッチした後の前線へのフィードが思い描かれていた。通れば一気にチャンスが拡大する。
「ボールをつかみにいった瞬間に、その次のプレーのことを考えてしまっていたんですよね。フィードのことに考えが行っていて、ボールを落としたら、僕の真後ろに相手の選手がいました。簡単に押し込まれて失点して、完全に流れが変わりました」
不運な失点がさらなる不運を呼び、桐蔭学園は2-4という大敗で姿を消した。だが、藤川さんにとっての本当の悲劇は、試合後に起きた。
「負けた直後に受けたインタビューで、『後悔はありませんか?』と聞かれて、『まったくありません』と言ってしまったんです。強がってしまって、『自分なりにはうまくやれた』といった発言をしてしまって……あれは、本当に後悔しましたね」